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こちらは2022年6月に公開したコラムです。
販売・取扱を終了している商品、パッケージ意匠を変更した商品を含む場合がございます。 何卒ご了承ください。

6月の香ディネート

「香ディネート(コーディネート) 」。
その時期のおすすめの香りと器をピックアップし、さまざまな日常のシーンに合わせた「香りある豊かな暮らし」をご紹介する企画です。
暮らしの中に香りを取り入れて、毎日がより豊かになるようなご提案ができればと思います。

「花橘の香をかげば」
梅雨に楽しむ爽やかな香り


今年も、五月雨の季節がやってきました。
夏に向けて水をためておく時季……とはいえ、どんよりした日々が続けば気分もすっきりしませんね。

そんな季節にも、古くから日本人の心を癒してきた香りがあります。
今月は時を超えて人々に愛される「花橘」をテーマに、「源氏かおり抄 花散里」と「色絵丸香炉 花橘」で、六月の風情を楽しむ「香ディネート」です。

初夏に咲く可憐な花
古来愛される長寿のシンボル


古今和歌集に、こんな歌があります。

 さつきまつ 花橘の香をかげば
  昔の人の 袖の香ぞする(読み人しらず)

ここでいう「さつき」とは陰暦五月、今の6月ごろと考えられます。
白く可憐な花をこの時期に咲かせ、爽やかに漂う橘の香りは、古くから誰の心にも懐かしい香りとして楽しまれてきました。

橘の実は「非時香菓」(ときじくのかくのこのみ)とも呼ばれ、夏に実り、秋冬になっても霜に耐え、香味が変わらない木の実とされます。
また、寒暖の差なく葉が生い茂る様子から、長寿瑞祥のシンボルとして日本人に愛されてきました。
平安京の紫宸殿には「左近の桜」「右近の橘」が並んでおり、今でも京都御所でその姿を見ることができます。

時をへだてて訪ねる源氏
橘の香りに誘われて


源氏物語の第十一帖『花散里』では、光源氏が橘の香りに誘われ、麗景殿女御を訪ね、不沙汰をしていた女御の妹・花散里と再会する場面が描かれます。

 橘の香をなつかしみほととぎす
  花散る里を たづねてぞとふ



五月雨の晴れ間に、ひとときの再会を楽しむ心おだやかな時間を、軒端に漂う橘の香りが印象的に彩ります。
「源氏かおり抄 花散里」は、そんな情景をイメージして作られた、花橘の甘く爽やかな香りです。



「花散里」には、橘の実とほととぎすを描いた絵巻物状の香皿と、光源氏たちが再会した夜空に浮かぶ二十日月型の香立をセットにしました。

花の姿と香りを合わせて
しっとりとした空気に涼しさを


橘の白い花と、鮮やかな緑の葉を描いた「色絵丸香炉 花橘」。松栄堂オリジナルの京焼香炉です。
「みやこ灰」を入れれば、お香を立ててお使いいただけます。

ちょっと香りを楽しみたいとき、ふたを外し、灰を入れた香炉にお香を立ててお楽しみください。



香炉の灰は火箸などでかき混ぜ、空気を含ませてご使用ください。
また、長時間使用していると、燃えつきたお香の灰やヤニで、香炉の灰が汚れてきます。
たき残りが出るようであれば取り除き、必要に応じて天日で干すなどしっかりと乾燥させ、灰そのものについた匂いが気になってきたらお取り替えください。



力強い橘の絵付けと、爽やかな甘さが広がる「花散里」の香りで、初夏ならではの風情をお楽しみください。

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