「香ディネート(コーディネート) 」。
その時期のおすすめの香りと器をピックアップし、 さまざまな日常のシーンに合わせた「香りある豊かな暮らし」をご紹介します。
毎月お届けしているこの企画ですが、今月は特別編として「歳時を彩る香ディネート」をお届けします。暮らしの中に香りを取り入れて、毎日がより豊かになるようなご提案ができればと思います。


ころもがえに
和の香りを添えて


風薫る季節となりました。
これから夏本番に向けて、ころもがえをされる方も多いのではないでしょうか。
ころもがえは、日本の気候風土に根ざした生活の知恵。
実はこの機会にも和の香りが役立ちます。

今月は「ころもがえ」を彩る「衣裳用 みやこ」や「極品(ごくひん) 防虫香」の「香ディネート」です。


これらのお香は、広く「匂い香(においこう)」と呼ばれるもので、天然の植物香料を細かく刻んで室温で香るように調合したお香です。

これを小さい巾着袋に入れるとおなじみの「匂い袋」に。
見た目も可愛らしく、バッグやポーチにつけたり帯揚げに通したりと楽しめます。
また、少量を和紙などで挟むと「文香(ふみこう)」に。
お手紙に添えるほか、名刺入れやお財布などに忍ばせると、ふんわりと香りがうつります。


ほのかな香りが
衣服をやさしく包み込みます


ころもがえには、たんすの引き出し一段に適した量を包んだ、「衣裳用 みやこ」や「極品(ごくひん) 防虫香」をお使いください。
染みや変色を避けるために、衣服には直接触れないようすみの方に一個ずつ入れていただくと、衣裳にやさしい和の香りがうつります。

初夏に入れた匂い香のお取り替え目安は、およそ秋ごろ。
香りが薄くなるだけでなく、香りの変化・染み・変色を防ぐためにも、約半年後の秋のころもがえの際に、新しいものとお取り替えいただくのがおすすめです。
また匂い香は湿気や高温なども嫌いますので、お使いになる環境もあわせてお確かめください。


衣裳用と防虫香
その違いは……?

衣裳用は、衣裳を心地よく香らせることを目的に香りを整えておりますので身に纏うものには衣裳用を、書巻・軸物・毛筆・人形などの保管には防虫香をとおすすめしております。


衣裳用 みやこ」は、華やかな香りで、やさしい移り香をお楽しみいただけます。


極品 防虫香」は、甘さを秘めた伝統的な漢薬の香りです。


防虫香=虫を防ぐお香?
ご先祖さまたちの経験と知恵の積み重ね


匂い香に用いている香料の中で、白檀・丁子・桂皮・竜脳には虫に対する忌避効果のあることが知られています。
松栄堂がおつくりする匂い袋・防虫香は、これらを基本原料としています。
それらの調合は先人たちの経験や知恵の積み重ねによるもので「忌避効果」としてはどちらも同じ、虫に「来ないでね」と頼むような穏やかなものです。

確実な防虫効果をお求めの方は、薬剤を用いた防虫剤などをご検討くださいね。
ただ、匂い香と併用すると香りが変わってしまうことがありますのでご注意を。


古き良き防虫香
そのルーツは奈良時代にあり

最後に、少し防虫香の歴史を紐解いてみましょう。
古くは「えび香」と呼ばれ、数々の香料を調合したものが巾着のような袋に詰められ、大切な物を虫たちから守ったり、その香りをうつしたり、と用いられてました。
正倉院の宝物に現存しているものがあるので、機会があればお目にかかれるかもしれませんね。


たんすを開けたときに漂う
奥ゆかしい香り


季節の移ろいを楽しみながら、衣服を大切に保管する丁寧な暮らし。
そこにそっと和の香りを添えてみませんか。
奥ゆかしい香りが次の季節まで衣服をやさしく包み込みます。